ビビリフクロウの足跡

いつもお世話になっているインターネットへの恩返し

Rancher 2.0で複数のKubernetes環境を管理してみる

2018年4月末にコンテナ管理プラットフォームであるRancherのバージョン2.0がGA(General Availability)となりました。対応するコンテナオーケストレーションツールをKubernetesに絞り、オンプレ/クラウド問わずKubernetesクラスタをマネジメントするOSSに昇華されているみたいです。今回はこのRancher 2.0を使って

  • 新しいKubernetesクラスタの作成
  • 既存のKubernetesクラスタのインポート
  • Helmでアプリケーションをデプロイ

というところまでをやってみたいと思います。

環境

今回は以下の環境で試用してみます。

  • OS
  • Rancher
    • Ver: v2.0.2
  • インポートするKubernetes
    • Ver: 1.10.0
  • RKE(Rancher Kubernetes Engine)のKubernetes
    • Ver: 1.10.1
  • 構成サーバ群
    • Rancherサーバ : rancher-server-01
    • RKE k8sマスター: rancher-k8s-master-01
    • RKE k8sノード#1: rancher-k8s-node-01
    • RKE k8sノード#2: rancher-k8s-node-02
    • 自前k8sマスター: tst-k8s-master01
    • 自前k8sノード#1: tst-k8s-node01
    • 自前k8sノード#2: tst-k8s-node02

事前準備

今回は検証なので、ポートは全開放でいきます。以下のコマンドを全ノードで叩きます。

firewall-cmd --set-default-zone=trusted

次に全ノードにDockerをインストールして、サービスを起動します。

yum -y install docker
systemctl enable docker
systemctl start docker

この時点でインポートする自前k8sを構築しておきます。注意点としては、kube-dnsIngress Controllerを忘れずにデプロイしておきます。

Rancherサーバの構築

Rancherサーバを構築していきますが、難しいことはありません。以下のコマンドを叩くだけです。

mkdir /var/lib/rancher
docker run -d --restart=unless-stopped -p 80:80 -p 443:443 -v /var/lib/rancher:/var/lib/rancher:Z rancher/rancher:v2.0.2

ここで/var/lib/rancherはRancherサーバの永続ボリュームとして使うディレクトリなので、お好みで調整してください。

またCentOSをはじめとしたRHEL系OSではSELinuxが有効になっているかと思いますので、-vオプションの末尾に:Zをつけて適切なラベリングを行うようにしておきます。

Rancherサーバが起動したら、ウェブブラウザからRancherサーバにログインします。するとまずadminユーザのパスワードを作成するよう求められるので、パスワードを入力して次に進みます。

f:id:bbrfkr:20180527133404p:plain

RancherサーバのURLはアクセスした際のURLがデフォルトで表示されていますので、そのままで次に進みます。

f:id:bbrfkr:20180527133617p:plain

すると以下のような画面が表示されます。クラスタを登録する前にHelm(k8sのパッケージマネージャ)を有効化しておきましょう。「Catalog」を選択します。

f:id:bbrfkr:20180527133935p:plain

「Helm Stable」のスイッチを「Enabled」にします。

f:id:bbrfkr:20180527134026p:plain

これでHelmの有効化は完了です。

新しいKubernetesクラスタの作成

次にクラスタを登録していきましょう。まずはRKEクラスタを作成・登録します。「Clusters」を選択し、「Add Cluster」をクリックします。

f:id:bbrfkr:20180527134301p:plain

すると以下のような画面になります。今回は一般的な仮想マシンからk8sクラスタを作成しますので、「CUSTOM」を選択し、「Next」をクリックします。

f:id:bbrfkr:20180527134558p:plain

次の画面ではRKE k8sクラスタを作成するのに必要なコマンドが表示されます。k8sマスターを登録をするには「Node Role」の

  • etcd
  • Control
  • Worker

にチェックを入れ、記載されているコマンドを実行します。が、SELinuxが有効な環境に対してはこのままではダメで、-vオプションの末尾に:Zをつけるのを忘れないようにしましょう。

f:id:bbrfkr:20180527135124p:plain

同様にk8sノードを登録するには「Node Role」の

  • Worker

にチェックを入れ、記載されているコマンドを実行します。-vオプションの末尾に:Zをつけるのを忘れずに。

それぞれのサーバでコマンド実行が終わったら「Done」をクリックします。そうするとRKE k8sクラスタの作成が始まります。

f:id:bbrfkr:20180527135420p:plain

既存のKubernetesクラスタのインポート

RKE k8sクラスタの作成を待っている間に既存k8sクラスタをRancherサーバにインポートしましょう。「Clusters」を選択して「Add Cluster」をクリックし、今度は「IMPORT」を選択します。その後「Next」をクリックしましょう。

f:id:bbrfkr:20180527135816p:plain

すると既存k8sクラスタをRancherサーバに登録するためのコマンドが発行されますので、k8sマスター上で二番目のコマンドを叩きます。叩いたら「Done」をクリックします。

f:id:bbrfkr:20180527140041p:plain

戻った画面で「State」の値が「Active」になっていればRKE k8sクラスタの作成・登録、既存k8sクラスタの登録は完了です。

f:id:bbrfkr:20180527140407p:plain

Helmでアプリケーションをデプロイ

Rancherに二つのk8sクラスタが登録されたので、それぞれのクラスタ上にアプリケーションをデプロイしてみましょう。まずはRKE k8sクラスタ上にデプロイしてみます。「Global」から「Cluster: rke-cluster-01 > Default」をクリックします。

f:id:bbrfkr:20180527140648p:plain

「Catalog Apps」を選択し、「Launch」をクリックします。

f:id:bbrfkr:20180527140943p:plain

表示されたカタログ群から「dokuwiki」を選択します。

f:id:bbrfkr:20180527141051p:plain

今回はPersistent Volumeをまだサポートしていないクラスタなので、アプリケーションのデプロイでPersistent Volumeを使わない設定にします。またデフォルトではLoadBalancerタイプのServiceが作られるので、これをClusterIPに変更します。下のほうに進んで「Add Answer」を2回クリックし、以下のKey-Valueを入力します。その後「Launch」をクリックします。

  • serviceType = ClusterIP
  • persistence.enabled = false

f:id:bbrfkr:20180527141526p:plain

しばらくすると以下のようにゲージが緑になります。この状態になれば必要なPodは上がっている状態です。

f:id:bbrfkr:20180527141716p:plain

では、Ingressを作成して外部からdokuwikiにアクセスできるようにしましょう。「Workloads」を選択し「Load Balancing」タブを選んでから「Add Ingress」をクリックします。

f:id:bbrfkr:20180527152045p:plain

Ingressを作成する際のパラメータは以下の通りにします。

  • Name: (任意の名前)
  • Namespace: (作成されたNamespace)
  • Rules
    • Automatically generate a .xip.io hostname
    • Target: (作成されたService)
    • Port: 80

f:id:bbrfkr:20180527152726p:plain

以上、入力したら下の「Save」をクリックします。少し経つと以下の通りURLが発行されるので、アクセスしてみましょう。dokuwikiのホームページが表示されます!

f:id:bbrfkr:20180527152913p:plain

f:id:bbrfkr:20180527152939p:plain

次は既存k8sクラスタ上にアプリケーションをデプロイしてみます。「Global」から「Cluster: my-cluster-01 > Default」をクリックします。

f:id:bbrfkr:20180527153218p:plain

「Catalog Apps」を選択し、「Launch」をクリックします。

f:id:bbrfkr:20180527153309p:plain

表示されたカタログ群から「zeppelin」を選択します。

f:id:bbrfkr:20180527153401p:plain

このカタログではデフォルトのCPU・メモリリソースを最低2000millicore、4096MiB確保するように設定されているので、今回構築したクラスタで展開できる値に修正します。「Add Answer」を2回クリックし、以下のKey-Valueを入力します。その後「Launch」をクリックします。

  • zeppelin.resources.limits.cpu: 1000m
  • zeppelin.resources.limits.meory: 2048Mi

f:id:bbrfkr:20180527153631p:plain

ゲージが緑になるまで待ちましょう。

f:id:bbrfkr:20180527153739p:plain

dokuwikiと同様、Ingressを作っていきます。「Workloads」を選択し「Load Balancing」タブを選んでから「Add Ingress」をクリックします。

f:id:bbrfkr:20180527153856p:plain

Ingressを作成する際のパラメータは以下の通りにします。

  • Name: (任意の名前)
  • Namespace: (作成されたNamespace)
  • Rules
    • Specify a hostname use
      • Request Host: (Ingress Controllerに対応した名前)
    • Target: (作成されたService)
    • Port: 8080

f:id:bbrfkr:20180527154002p:plain

以上、入力したら下の「Save」をクリックします。表示されたURLにアクセスしてみましょう。zeppelinのホームページが表示されます!

f:id:bbrfkr:20180527154255p:plain

f:id:bbrfkr:20180527154318p:plain